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(…持ち帰る?…あっ、私をかっ!)
余計にジタバタしてしまうが、彼の腕からは逃げられない。
何とか上半身を起こし、彼の上に座り込む形にはなったが、今だにピッタリと胸と胸がくっついて離さない。
詩織の腕は彼の背中を叩いていた。
彼はさっきよりも腕に力を込めて強く抱きしめる。
「…言っとくけど、抵抗すればするほど燃えるよ?」
耳元でそう囁かれ、詩織の身体が強張る。
そんなことを言われたのも初めてだったが、男の子に耳元で囁かれたことに驚いてしまい、みるみる顔が赤くなっていく。
「いいね、その反応」
耳に息がかかる。
彼は面白がって言っているだけだろうが、詩織にとっては面白くない。
何とか隙を狙って攻撃しようと考えた。
だが、彼は抱きしめたまま詩織とともに立ち上がった。
「…名残惜しいけど、授業が始まるから連れて行ってあげるよ」
スッと腕の力を抜き、詩織の顔を覗き込む。
「君、編入してきた子でしょ?
初日から遅刻じゃ駄目だろ?」
ニッコリと笑う顔は、さっきまでの強引さは感じられない。
なぜ知っていたのかはわからないが、とにかく案内すると言うので着いて行くことにした。
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