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生徒会長に設けられた寝室は生徒会用のプラント、クローズドホームに置かれている。
広々とした球体の部屋は稼働していないプラネタリウムと似ている。ベッドだけのシンプルな内装。柄の無い真っ白な布団とシーツがベッドの上に敷かれ、其処には寄り添い合う二つの影がある。ベッドを囲むように取り付けられたライトが二つの影を淡く照らした。
カーキ色のタンクトップに黒色の繋ぎ。普段公には見せないラフなルームウェア。日常生活の中ではブレザーをしっかり身に着けているレイル・コンスタンティンノーブルにとって気楽でいられる服装だった。
「ふう…。」
思わず零れる、至福に感じ入る心からの吐息。激務から解放された事だけじゃない。頭に感じる二つの、温かみのある物体。それを枕に寛いでいるのが尚、彼の心の緩みは大きくする。
二つの物体、無垢で純白の柔らかな両膝。そしてその膝の主であるメイデン・メタルパレスがくれる安らぎが彼をどこまでも尊い安息の海に浸していた。
「マヌケな顔。」
「ん?」
緩みきったレイルの顔を余念の無い目つきで見下ろすメイデン。凍らされた炎のように艶めく赤銅色の瞳。激しい乱反射の奥底には愛おしさで身を揺らす灯が穏やかに立っている。
「いいじゃん。君の前だし。」
「ホント、あんたの馬鹿面見れる立場で良かったわ。」
サディスティックな発言と微笑。しかしレイルに自らの両膝を預ける姿勢はレイルの全身を柔らかく包容している。
メイデンは無言でレイルの左頬に左手を添えた。
「…冷たい。」
指摘され、メイデンは思わず手を離した。自らの左手を、まるで他人からの借り物のように見詰めた。元々美しい白い肌が映えていたが、血の気が幾分失せていた。
いつもは柔らかな肌が、心無しか強張っている。
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