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「…眠いの。」
「一緒に寝る?」
レイルは無邪気に微笑んだ。
「しばらくご無沙汰だしね。」
「盛んじゃないの。」
「いいじゃん。」
伸ばされた左手がメイデンの頬を通り、薄紫の髪を掻き上げた。サラサラと、セミロングが波打つ。
「たまにはさ、バカみたいにイチャツいて、キスして、ヤるのもいい。」
「退廃的。現実逃避したいの?」
云って、メイデンは悔いた。レイルは甘えてきているだけなのに、どうして突き放してしまうんだろう。
「……っ。」
メイデンはレイルの頭を強引にシーツに落とした。「痛っ!」と漏らすレイルを尻目に立ち上がり、傍に佇む。
「フリス……?」
唐突に、全身の力を蒸発させて、レイルの上に崩れ落ちた。レイルより細身な体が重なる。耳を胸にピタリとつけ、メイデンは静かに、息を潜めて、心音を探った。
「…明日、サボってよ。」
「昼までかな…。予算審議あるからさ。」
「そんなん、いいじゃない。」
「リカルドに怒られる。」
「意気地なし…。」
レイルは苦笑し、メイデンの体をソッと動かした。首に優しく両腕を回し、抱き締める。うなじにキスを落とした。
「…どんなに長く寄り添っても、永遠は無いんだ、フリス。」
メイデンは停止した。息を呑む。緊張が、肢体を固める。
「だから、いらない。永遠なんていらない。
一瞬で、いい。今欲しいのは、これ。」
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