1.眠れない夜

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「…眠いの。」 「一緒に寝る?」 レイルは無邪気に微笑んだ。 「しばらくご無沙汰だしね。」 「盛んじゃないの。」 「いいじゃん。」 伸ばされた左手がメイデンの頬を通り、薄紫の髪を掻き上げた。サラサラと、セミロングが波打つ。 「たまにはさ、バカみたいにイチャツいて、キスして、ヤるのもいい。」 「退廃的。現実逃避したいの?」 云って、メイデンは悔いた。レイルは甘えてきているだけなのに、どうして突き放してしまうんだろう。 「……っ。」 メイデンはレイルの頭を強引にシーツに落とした。「痛っ!」と漏らすレイルを尻目に立ち上がり、傍に佇む。 「フリス……?」 唐突に、全身の力を蒸発させて、レイルの上に崩れ落ちた。レイルより細身な体が重なる。耳を胸にピタリとつけ、メイデンは静かに、息を潜めて、心音を探った。 「…明日、サボってよ。」 「昼までかな…。予算審議あるからさ。」 「そんなん、いいじゃない。」 「リカルドに怒られる。」 「意気地なし…。」 レイルは苦笑し、メイデンの体をソッと動かした。首に優しく両腕を回し、抱き締める。うなじにキスを落とした。 「…どんなに長く寄り添っても、永遠は無いんだ、フリス。」 メイデンは停止した。息を呑む。緊張が、肢体を固める。 「だから、いらない。永遠なんていらない。 一瞬で、いい。今欲しいのは、これ。」
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