1.眠れない夜

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再びうなじにキスを落とした瞬間、メイデンは全てが溶けていくの感じた。堤が潰え、情欲が流れ出る。何もかもが溶け合い、混ざり合い、どうしようも無い所まで広がった時。 フリスは、泣いていた。 情けないと自省しても、涙は勝手に滴り落ちる。唇を噛み、声をせき止めるのが精一杯張れる、僅かな意地だった。 だけどダメだ、レイルの胸元は濡れている。嗚咽も時折漏れている。レイルは気付いているだろう。 レイルは何も語らなかった。髪を優しく撫でつけ、天井を見ている。 それが怖かった。一言でもからかえばすぐに立ち直れるのに、バカにしてくれればすぐに云い返せるのに。そう、黙って何もかも受け止め無いで欲しい。 また、私はレイルに委ねてしまう。レイルはもう多くを背負っている。私には持てない多くの荷が彼の両肩にはある。レイルは器用じゃない。多くの荷を負ってしまうのは不器用だからだ。選べないからだ。 私が取り落とした弱さも、この人は掬い上げていくだろう。さも当たり前に、人の良い笑顔を浮かべて。 「レイル。」 鼻声にはなっていない。まだ張り続ける意地。 「私に、頂戴。」 「何を?」 「あんたの、モノ。」 「全部必要なんだけどなぁ。」 「一個くらい、いいじゃない。」 「俺は…フリスが欲しいよ。」 「やだ、あげない。」 シュンと、レイルは口を噤んだ。 「私は、此処にいる。 此処じゃないと、アンタを繋げない。」 寄り添うだけ。それ以上行ったらダメだ。私はレイルに逆らえない。ちゃんと、此処にいなくちゃいけない。 レイルを繋ぐの自分だ。そう、ありたいから。
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