201人が本棚に入れています
本棚に追加
/949ページ
再びうなじにキスを落とした瞬間、メイデンは全てが溶けていくの感じた。堤が潰え、情欲が流れ出る。何もかもが溶け合い、混ざり合い、どうしようも無い所まで広がった時。
フリスは、泣いていた。
情けないと自省しても、涙は勝手に滴り落ちる。唇を噛み、声をせき止めるのが精一杯張れる、僅かな意地だった。
だけどダメだ、レイルの胸元は濡れている。嗚咽も時折漏れている。レイルは気付いているだろう。
レイルは何も語らなかった。髪を優しく撫でつけ、天井を見ている。
それが怖かった。一言でもからかえばすぐに立ち直れるのに、バカにしてくれればすぐに云い返せるのに。そう、黙って何もかも受け止め無いで欲しい。
また、私はレイルに委ねてしまう。レイルはもう多くを背負っている。私には持てない多くの荷が彼の両肩にはある。レイルは器用じゃない。多くの荷を負ってしまうのは不器用だからだ。選べないからだ。
私が取り落とした弱さも、この人は掬い上げていくだろう。さも当たり前に、人の良い笑顔を浮かべて。
「レイル。」
鼻声にはなっていない。まだ張り続ける意地。
「私に、頂戴。」
「何を?」
「あんたの、モノ。」
「全部必要なんだけどなぁ。」
「一個くらい、いいじゃない。」
「俺は…フリスが欲しいよ。」
「やだ、あげない。」
シュンと、レイルは口を噤んだ。
「私は、此処にいる。
此処じゃないと、アンタを繋げない。」
寄り添うだけ。それ以上行ったらダメだ。私はレイルに逆らえない。ちゃんと、此処にいなくちゃいけない。
レイルを繋ぐの自分だ。そう、ありたいから。
最初のコメントを投稿しよう!