―序章―

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「――――切り込めぃ!」 切れ長の眼をし、黒ラシャの軍服に身を包んだ美丈夫は号令を発すると、自ら先頭に立ち、突入を開始した。 横一閃。 顔面から鮮血を撒き散らした男が一人、その場にどぅ、と倒れる。 更に、しっかりとした踏み込みから繰り出される突きが、右隣の男を貫く…… 鬼神の如き男――土方歳三。 宮古湾――― 1869年5月6日、新政府軍の海軍が停泊するこの海上にて、旧幕府軍による日本史上かつてない作戦が展開されていた。 アボルダージュ。 第三国の国旗を掲げて敵艦船まで接近し、直前で自国の旗を掲げて接舷して切り込み、乗っ取ってしてしまう…… これを、甲賀源吾艦長率いる「回天」が、明治政府主力軍艦「甲鉄」に向けて実行したのである。
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