第一章

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春の木漏れ日が気持ちいい。 そんな気分で、土方歳三は箱館市中を巡回していた。 巡回と言っても、大々的なものではない。小姓の市村を連れ、街の状況を見て回っている。 「土方様、あれは?」 市村が指差す方向には、異様な一団がいた。 「あれぁ、義勇軍だな。宮古湾じゃあ大活躍だったんだよ」 あの熾烈な海戦からまだ一週間程しかたっていなかったが、土方は懐かしいような気持ちになった。 ―――時の流れるのが遅いようで早い。 毎日が忙しく、過去を振り返る余裕すらない状況が、そう思わせるのだろう。
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