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「何じゃ、もう見付かっておるではないか。」
ミコトは莉奈の肩でつまらなそうに呟き、口を開けて大きな欠伸をする。
「見付かったって、あそこには悠斗しか…まさか。」
「そのまさかじゃ…。」
莉奈はミコトの言葉で確信を得ると、溜め息を吐いて振り返った。
「アホくさ、もう帰りましょう。」
「では、儂を神社まで送ってくれ。」
「そうね、ちゃんと約束は守るわ。それじゃ、リリちゃんは…」
莉奈がリリに視線を落とすと、リリは膨れっ面をして見るからに怒りを露にしていた。
「どうしたの、リリちゃん?」
「御主人様が、他の方と遊んでいるのは嫌です!」
「あら、リリちゃん妬いてるんだ。可愛い。」
「私も、御主人様に遊んでもらいたいです!」
「ふふっ、それじゃあ、私達も行きましょうか(殴りに)。」
「はい♪」
莉奈はリリと手を繋ぎ、二人は階段を使って土手に下りて行った。
そして、ミコトはその場に一人残され、キセルを口にくわえて煙りを空に吐き捨てる。
「あやつも、哀れな奴よの…。」
ミコトは夕闇に包まれた土手を眺め、莉奈に殴り飛ばされる俺を見て静かに笑みを浮かべていた――。
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