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「…すぅ……すぅ」
静かに寝息をしている、黄色いの髪の少女…鏡音リンは人間ではない。
彼女はVOCALOID。人を歌で幸せにするために造られた“ココロ”を持ったロボット。しかし、彼女が…鏡音リンが造られたのは最近ではない。20年前、科学者桂木明裕によって“発見された”この世界で最初のVOCALOIDなのだ。
桂木明裕によって発見された時、リンはショート(故障)していた。メモリのデータは所々抜けていて、内部の回線は切れていたり、表面は長い年月放置されていたのか少し錆びかかっていた。
だが、他のロボットと圧倒的に違う事があった。それは、彼女には“ココロ”があった。正確にいえば、“ココロプログラム”という一つのシステムのようなものなのだが、明裕はココロという存在。そして、彼女のメモリの中にある、『3つの奇跡』という言葉の本当の意味がどんなものなのか興味をもった。
以来、明裕はリンの修理に没頭した。しかし、当時世界一の科学者と言われた明裕でさえ、リンの修理には相当な時間を要した。明裕がリンの修理を始めてしばらくすると、リンは、自ら話し始めるようになった「ア…ナタハ…?」
リンが喋ったことに明裕は驚いたが、それよりも…自分がやってきたことは無駄ではなかった。という気持ちの方が強かった。
「ああ…僕は、桂木明裕君は?
「ワ…タシ…ハ、鏡音リン…」
「そっか…。鏡音リン。いい名前だね。」
明裕がそういうと、リンは少し困ったような表情をした。…人が表情を変えるのと同じように、ごくあたりまえに…。
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