リンとマスター、リンと明裕

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その後も、明裕はリンと一緒にいた。リンは、少しずつだが明裕に“ココロ”を開いていった。しかし、リンには、明裕に完全に心を開けない理由があった。 (明裕さんに完全に“ココロ”開いてしまったら…今度こそ私は…) リンは怖かったのだ。明裕を失う事が…。自分を救ってくれた人がまたいなくなる…。そう思うだけでリンは辛いのだ…。 「リンは、もし僕がいなくなったらどうする?」 ある日、明裕はリンに聞いた。リンは、動きを止め、明裕の方を向いて 「なんで、いきなりそんな質問を…?」 リンは、とてつもない不安と恐怖に襲われた。そして、“ココロ”の中でその不安が本当にならないように祈った。…しかし、その希望は明裕の言葉によって打ち砕かれた。 「…僕の命は、あとそう長くないから…」 「明…裕さん。…嘘……ですよね?」 リンの言葉に明裕は首を横に振った。その瞬間崩れ落ちるように、床に膝を付いた。 「なん…で?なんで?」涙を流しながら呟くリンに、明裕が歩み寄って、リンの頭に手を置いた。 「リン…ごめん。もっと早く言えばよかったのに…ごめん…」 「謝らないで…ください…。わたし…」 …やっと心を開けると思ったのに。しかし、明裕には届かなかった。明裕はリンの方に倒れた。 「あ…明裕さん?いや…目を覚ましてください。…明裕さん!!明裕さん!!お願い!!目を覚まして!!私を1人にしないで!!」 リンは、泣きながら叫んだ。しかし、その声が明裕に届くことは永遠になかった…。 カーテンの間から射し込む朝日が、リンの頬を照らしていた。 「明裕さん…」 そう呟いて、写真を抱いた。そしてさっきと同じように、小さく笑顔を見せた…
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