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「‘はぁ……’じゃ、ありませんの!!早くお姉様から離れなさい!!」
瞬時に指の間に鉄の針を挟み、黒子さんは戦闘体制に入る。御坂さんは何故か高揚し、赤面して大人しくなっている。この状況は好都合ですね。……って赤くなっている御坂さんを見れて好都合って言っている訳ではない。――――帰るための状況が整ったのだ。
俺は抱きついている御坂さんの耳に顔を近づけ、耳打ちをする。
「(……はうっ!!……ど、どうしたのよ!?)」
「(……ちょっと用事が出来てしまったんで話すのは今度でいいですか?)」
「(え、ええ。……いいわよ)」
「(ありがとうございます。……あと貰ってばっかりだったんで……)」
カーディガンのポケットからあるものを取り出して、御坂さんのブレザーのポケットにスッ、と入れる。
「(なにいれたのよ?)」
「(まあそれは俺が『いなくなって』から開けてください。…改めてコインと髪止め、ありがとうございました)」
そういって御坂さんに微笑みかけると、俺は御坂さんからゆっくりと離れた。離れた瞬間、儚げな表情を御坂さんがした感じがしたが、やはり気のせいだろう。
そして、膝を少し曲げ、重心を低くして黒子さんと対峙する。
「動かないでいるつもりですの?このままじゃ状況は打破出来ませんわよ?」
「なら……これならどうです?」
俺は先程、黒子さんが投げた鉄の針を『空間移動』で手に挟み、黒子さんに投げる。
「そんな攻撃……どってことないですわ!」
飛んでくる鉄の針を『空間移動』で自らの手に移動させた。……が、俺には計算通りの行動だ。
それを確認した瞬間、俺は足に力を入れ一気に黒子さんとの差を縮める。
「ふん!!そんなこと分かっていましたわっ!!」
太股に巻いてある鉄の針に黒子さんは手を触れていくと、鉄の針は触れられた途端消えていく。そして―――俺の目の前に飛んでくる。
一本一本だけならまだ避けることが可能だが流石にそこまで世界は良いように創られてはいないようで数十本纏めて飛んできている。――だが。
「計算通りですよ!!」
と叫びながら自らを対象に黒子さんの後ろに『空間移動』を発動させる―――と言うことを読んでいたのか黒子さんは咄嗟に後ろを向く。
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