* PIECE1 *

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「あのっ…」  木田さんは俺のほうをくるりと向いた。  どきっ…  心臓が大きく動いた。 「あっ…山本くん?だっけ?」 「えっ?なんで俺のこと知ってんの?」 「だって自己紹介してたじゃん。先生にも怒られてたし…」 「ははそうだね…」  なんかかっこ悪いな俺… 「えっと…あたしは木田…なんかその…よろしくね…」  木田さんはもじもじしながら俺にそう言った。 「あのさっ!よかったらメアド聞いてもいい?」  話の間が空かないうちに俺は勝負にでた。 「…もちろん。」  木田さんは少し考えたみたいだけどなんとか承諾してくれた。  よかった… 「じゃあ俺、送信するね…」  送信 山本春樹  ぴろぴろりん。  赤外線通信をした木田さんの携帯は、典型的なメロディーによって、俺のメアドが、木田さんの携帯に入ったことを知らせた。 「じゃあ後でメールするね?」 「うん。ありがとう。」  まもなく一番線に電車が…  ちょうどその時、電車が来るアナウンスがホーム全体に響き渡った。 「部活?」 「うん。中学の時何部だったの?」 「バスケのマネだったんだ。」 「あぁ。なんかそれっぽい。」  電車に乗ってからも多少ぎこちないが、会話を続かせることが出来た。  やっべぇ…。めっちゃ緊張する…  席は空いているし二人で並んで座って電車に揺られた。 「ごめん…俺次だわ…」 「そっか。じゃあまた明日。後でメールするね?」 「ありがとう。また明日。」  ぷしゅー。  電車のドアが閉じるとまた電車は、ガタンゴトンと走りだした…  今までで一番緊張したまた明日だった。  もっと木田さんと話したかったな…  バスケ部のマネージャー。  兄弟は弟が一人。  家は一軒家。  ティンカーベルが好き。  木田さんのこと、ほんのちょっとだけど知れた。  この後春樹が家に帰った後、携帯を手放せなかったのはまだもう少し先。
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