67人が本棚に入れています
本棚に追加
「うそっ!もう練習始まってんの?」
「春休みから毎日だし、ちゃんと高校はいってもあんまり変わんない。もう慣れちゃった。」
ゆいこと龍は、あまり車の通りが少ない静かな夜道を歩いている。二人の話し声しか聞こえない道で、ゆいこは久しぶりにドキドキした。
「さすが全国レベルになると中学とは違うね…」
「そりゃそうだ。おっと。待って。」
信号が赤になり、ゆいこと龍は止まった。
「危なっかしいな…そんなんで高校大丈夫なのかし…」
「心配ないって!もう友達出来たし!」
「本当か~?」
「本当だってば!ほらもう青だよっ!」
それからまた数分歩くとゆいこが止まった。
「龍くん。今日はここで大丈夫。」
「いいよ。家まで送るよ。」
「また明日からは朝練でしょう?早く帰ってちょっとでも体やすめなくちゃ。」
龍は少しだけ顔を下げて考えた。
「…ごめん。気を付けてな?」
暗くて龍の顔が良く見えなかったが、多分辛そうな顔をしていると思う。
長年の付き合いだからゆいこにはわかった。
「それじゃあまた今度。」
龍くん。頑張ってね?あたし応援してるから…
ゆいこはそう言いたかったが言わなかった。なんとなく、言ったら龍を苦しめてしまいそうだったから…
ゆいこはくるりと踵を返すと歩き始めた。
数分歩いた後…
「ゆいこ!」
振り替えると龍が目の前にいた。息がかなりあがっている。
「龍くん?」
「ごめん…。俺が……バスケやりたいだ…けなのに…ゆいこに……まで…気ぃ使わせて………。」
龍ははぁはぁ言いながらゆいこにいった。
「そんなこと……気にしなくても…だってそれならあたしだって……」
「ゆいこと…は…また…違うじゃん…これから…かまってやれない日がずっと続くし…」
「龍くん…あたしは大丈夫だよ…?」
「ごめん…本当にごめん…」
「龍くん…?」
「ごめん…引き止めて…」
「ううん。大丈夫。それじゃあ。」
「ゆいこ!」
龍がまたゆいこを引き止めた。
龍は止まっているゆいこに優しいキスをした…ゆいこもそれを優しく受けとめた…
「ごめん!また今度!!」
龍はバッとゆいこから離れるとそのまま走って帰ってしまった。
ゆいこはその後ろ姿を見えなくなるまでずっと見ていた…
最初のコメントを投稿しよう!