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「――っ?!」
顔を上げ、目を見張る。
自分が今、居るところは教室では無く、白い絶景の中。
いつの間にか寝てしまったのだろうか?
ゆらりゆらりと落ちて行く雪は頬や手に当たり、消えていく。冷たい。
(夢、じゃない?)
ザッと背後から雪を踏む足音がし、反射的に振り向いた。
長身で細身の藍色の中世ヨーロッパ風の服を身に纏い、艶のある黒髪は肌を余計に白く見せた。深緑の両眼。耳には紅いピアス。
目の前には夢の男がいた。
驚きの表情で自分を見ている。
「…何故?ここに?」
重低音の声で訪ねられた。
腰にある剣の柄に手をかけている。
(にげなきゃ…)
咄嗟に、直感に、思った。
男から視線をはずさず、一歩後退りする。
「あんた、何者だっ?」
鋭い目付きが身体を硬直させた。冷たい汗が頬を伝う。
その時、男の表情は一変した。
「――っ?!逃げろ!!」
男が近付いた、そのとき。
目の前が赤くなった。
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