第Ⅰ章 孤独の願い

7/15
前へ
/85ページ
次へ
「――っ?!」 顔を上げ、目を見張る。 自分が今、居るところは教室では無く、白い絶景の中。 いつの間にか寝てしまったのだろうか? ゆらりゆらりと落ちて行く雪は頬や手に当たり、消えていく。冷たい。 (夢、じゃない?) ザッと背後から雪を踏む足音がし、反射的に振り向いた。 長身で細身の藍色の中世ヨーロッパ風の服を身に纏い、艶のある黒髪は肌を余計に白く見せた。深緑の両眼。耳には紅いピアス。 目の前には夢の男がいた。 驚きの表情で自分を見ている。 「…何故?ここに?」 重低音の声で訪ねられた。 腰にある剣の柄に手をかけている。 (にげなきゃ…) 咄嗟に、直感に、思った。 男から視線をはずさず、一歩後退りする。 「あんた、何者だっ?」 鋭い目付きが身体を硬直させた。冷たい汗が頬を伝う。 その時、男の表情は一変した。 「――っ?!逃げろ!!」 男が近付いた、そのとき。 目の前が赤くなった。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加