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いつの間にか元の世界に戻っていた。
混乱と戸惑いが心を支配する。
(いったい、どういうこと?!)
震えが止まらない身体を両手で必死に抑えた。
「―…藤咲?」
突然、名を呼ばれ、ドキッと心臓がなる。
声の主は男性教師だった。
「どうした?体調が優れないのかね?」
ジッと舐めるような目付きで見つめてくる。
「いえ、大丈夫です」
冷静を装い、何でもないような態度で言うと、教師はひとつ咳払いをした。
「そうか。もし優れないようなら、勝手に保健室に行ってもいいからな」
そう告げて、授業は再度開始された。
いっけん生徒の体調を気にする良い教師、と見られがちだが…。
「―…また、かよ」
「―しょうがないよ。だって、アイツ…」
「―先生、ビビってるよ。情けねぇ…」
教室中がヒソヒソ声になる。
(…また、始まった)
原因は分かっている。
いつもの、だ。
何でもない風に外に目を向けた。
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