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人の気配は無かった。
驚き、慌てて振り向く。
夢の世界で見た同じ人物が、すぐ近くにいた。
「…大丈夫?」
先ほどと同じ質問。
「あっ、はい。」
素直に応えると、相手は微笑んだ。
「――っとに、バカだな」
一瞬、耳を疑う。
「―――はいっ?」
「だからぁ~、バカだな、アンタ。あんな簡単な取引に乗るなんてさ~」
はぁ~っと溜め息を吐かれた。
「ココが足りないんじゃないの~?」
こめかみ辺りをトントンと指で指した。
「なっ?!」
まだ会って間も無いはずなのに、その言い方に思わず絶句してしまった。
「あぁ~ん?ホントの事だろ?」
ニヤリと片方だけ口元を上げた。
「…最悪」
少しでも、良い奴だと思ってしまった自分が、情けない。
こんな奴だなんて…
頭が痛く感じた。
「それよりも、ここはドコ?」
少し自分の情けから心を入れ替えようと、話題を変えた。
男は、待ってました。と言わんばかりに悪戯っぽい笑みを含んだ。
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