序幕  夢うつつ

3/4
前へ
/85ページ
次へ
目を閉じれば、先ほどの夢の世界を思いだすことができた。 冷たい大気。 地は雪で覆われ、息も白い。 指先は赤く。 目の前も… 赤い血が雪に溶け込んでいる。 仰向けに横たわるひとりの男。 漆黒で艶のある髪。閉ざされた瞳には長い睫毛が影を落し、雪に同化しつつある白い肌。右耳には紅いピアス。 広がる血液。 私の意思とは関係無く、彼に近寄り、手を伸ばしていく。 触れるか触れないかで… 私は、いつも目を覚ます。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加