第Ⅰ章 孤独の願い

3/15
前へ
/85ページ
次へ
家を出ると、外は暗い雲に覆われ、冷たい風が吹いていた。 茶色のコートを羽織り、同色のチェックのマフラーを首にまき、冷たい空気にこれ以上触れないように身を小さくてして学校へ向かった。 自宅から近いという理由で高校に入り、あっという間に来年は受験生だ。 (また、先生達から言われるのだろうな…) そんなことを頭の片隅で考えていると、背後からけたたましい足音がした。 「おはよっ!藤咲さん!」 自分の真横まで走って来たのは、中学からの知り合いである長谷川 碧(ハセガワ ミドリ)。 短い黒髪に幼い顔立ち。陸上部所属で肌は健康的な小麦色。背は引くく、自分の肩までしかない。常に笑顔を絶やさず、気配り上手で人気者だ。 「おはよう」 「今日は早いね。朝から美人さんに会えるのって、今日は得した気分だ」 二カッと笑う口元から八重歯が覗いてる。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加