護送

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彼は外を見ていた。 まだ日も昇らない午前4時に護送車に乗せられ、すでに数時間停まることなく走り続けている。 いくら彼が我慢強いと言えど、何もせずに何時間もシートに縛られ続けているのは苦痛だ。 窓にはめられた鉄格子の隙間から見える細い景色を眺めることが、彼の唯一の気晴らしだった。 護送車が跳ねる度に両手にはめられた手枷がジャラリ、と重い音を立てる。 彼はそれを、少しだけ不快だと思った。 いつしか、手枷から伸びる鎖を握りしめていた。 「何のマネだ。離せ」 それに気付いた刑務官がコチラを睨む。 大人しく鎖を離す。 再び、ジャラリと音が鳴る。 彼は再び外に目をやる。 出来ることなら、耳を塞いでしまいたかった。
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