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やがて護送車は県道から外れ、舗装もままならない道にさしかかった。
ジャジャジャジャ、と絶え間なく鎖が音をたてる。
景色も緑色を含んだ自然的な物に変化していった。
彼はまだ、自分の行き先を知らない。
内陸の小さな村であるとしか、聞かされていない。
一際大きく跳ねる。
ガン、と前の席の背もたれに額をぶつける。
刑務官はそんな彼を見て鼻で笑い「静かにしろ」と、事務的に言った。
顔を上げる。
額は痛むが、血は垂れてこないので大したことはなさそうだった。
彼はいつものように心の中で祈る。
叶恵、もっと俺を痛めつけてくれ。
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