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ピピピピ~…
携帯のアラームに起こされた菜摘。まだ夢の中にいたい気持ちを抑え、目をこすりながら
ベッドから降り身支度を始める。部屋から出ると双子の兄が通り挨拶してきた。
『おはよう 菜摘』
『おはようございます、菜月兄さん』
お互い作ったような挨拶や笑顔を、いつもの日課のように交わす。
朝食を済ませ部屋へ戻ろうとした時、めったに顔を合わさない父親が声を掛けてきた。
「…2人共わかってるだろうな、今日は早く帰りなさい」
『はいはい、わかってますよ。今日は‘力’を移す日でしたよね』
菜月が答えたのに対し、菜摘は父親を一瞥し再び歩きだした。
父親も声を掛ける事などせず、伝え終わると2人に背を向け歩いて行った。
『いってきます』
『……』
2人は家を出て、菜月の自転車で学校へと向かう。
『…ねぇ、もうそろそろ素出してよ。てか、機嫌悪くない?』
暫く無言が続いていたが、急に菜月が自転車を漕ぎながら菜摘に言い出した。
『…別に菜月に言われたくないし。てか、機嫌悪くないし!!』
ぷぅッと菜摘は頬を膨らませ、菜月の腰を掴んでいた手にギュッと力を入れた。
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