7 天一号作戦

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そして大きく左舷に傾いた状態の大和で、自分と村上一水を支えながら階段を降り、やっとの思いで甲板へと着いた。甲板に着いた時には、立っているのも辛い位にまで大和は傾いていた。  海へ飛び込む者、何かにしがみつく者、そして…自決する者。その光景は様々であった。二人は必死に踏ん張りながら村上一水を抱え、ゆっくりと海面へと向かった。  それは一瞬の出来事であった。小さな爆発が起こり、田丸二曹は一人転がり落ち、甲板の対空機銃に強く体を打ちつけ、そして海面へと落ちていった。 「田丸二曹!!」  拓也は叫ぶ。  しかし…田丸二曹が海面に浮かび上がってくる事はなかった。 「そんな…嘘だろ。」  拓也は奥歯を強く噛みしめた。 「ちくしょう、死んでたまるか!!死んでたまるか!!」  拓也は無我夢中で村上一水を抱えながら海面に飛び込み、大和から少しでも離れようとした。  そして左舷に大きく傾いた大和は、大爆発を起こし海中へと没したのであった。  大和が沈んだ場所には大きなきのこ雲が浮かんだのだった。  重油の混ざった海面では誰もがパニック状態となっていた。  拓也は叫んだ。 「みんな落ち着け!!すぐに駆逐艦が救助に来る。それまで頑張るんだ。漂流物を見つけたら、それにつかまるんだ。」  拓也は村上一水の頬をたたき、起こそうとした。重油の混ざった海面で村上一水をこれ以上抱えられそうになかったからである。 「村上君、起きろ!!起きるんだ。」  村上一水は意識を取り戻した。 「班長…」 「泳げるか?頑張れ!!もうすぐ駆逐艦が来る。」
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