7 天一号作戦

33/33
前へ
/83ページ
次へ
「大和は…沈んだんでありますか?」  拓也はうなづく。 「田丸二曹も戦死した。俺達だけでも生きるぞ。」 「駆逐艦が来たぞ!!」  誰かが叫んだ。  誰もが「おーい」と叫びながら駆逐艦に向かって手を振った。  しかし、駆逐艦を見て安心してしまったのか。そのまま海中に没していく兵達もいた。  駆逐艦からはロープや縄梯子が投げ込まれ、救助が始まった。駆逐艦の水兵から「頑張れ」の大声が響く。  拓也は一本のロープを手に取り、村上一水の体に縛った。 「自分が先に、すいません、班長。」 「気にするな。」  拓也は微笑み、そして甲板の方を見上げ 「おーい、引っ張ってくれ。」  と叫んだ。  村上一水は駆逐艦の甲板へと無事引き上げられた。そして村上一水は顔の重油を手でぬぐいながら海面に目をやった。 「班長?」  海面に拓也の姿が見当たらない。 「班長!!班長!!  おい、俺をロープに縛ってくれた班長を見なかったか?  そんな…班長!!班長!!どこですか!?」  村上一水は海面に向かい、叫び続けたのであった。その声は言うまでもなく悲痛な叫び声であった。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

235人が本棚に入れています
本棚に追加