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「あ、お邪魔してしまいましたね。ごゆっくり、ご観覧してください。」
そう言い、その職員はいなくなった。
気付くと後ろには森下さんがいた。森下さんもその写真に気付いたらしい。
私は彼を見つめた。驚きのあまり言葉にはならなかった。
森下さんは笑顔でうなづいた。その表情は
―そこに写っているのは俺だよ―
と、言っている様だった。
「なるほど。確かに歴史のミステリーだ。」
横にいる老人は苦笑しながらボソっと言った。
「ここに写っているのは私なんだがね。」
老人が言った。
その一言に森下さんの表情が変わった。
「嘘だろ。」
その言葉は老人には聞こえなかったらしい。老人はその写真を見続けている。
「村上一水…村上一水なのか?」
老人はさっと振り返り、森下さんを見つめ驚きの表情を浮かべた。
「まさか…まさかあなたは新島班長!?あ、いや森下さんですか?」
二人は興奮し始めた。
「そうです、森下です!!あなたは村上一水ですか!?」
老人は何度もうなづいた。
「ご無事だったんですか、班長。」
老人は森下さんを、班長と呼んだ。
「ああ、あの後に無事に未来に戻れたんだよ。」
二人は涙を流しながら言った。
「班長が私を駆逐艦へと引き上げてくれた後、海面に班長の姿は…そうですか、無事未来に戻れたんですか。」
「ああ、おかげさまで戻れたよ。」
二人は抱き合ったのだった。
この時、私は森下さんの体験が本当だったのだと確信したのだった。
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