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美術だって音楽だって、全てにおいて私は純花より優れていて、純花は私より劣っていた。 唯一純花が、私より優れていてたのは家庭科だった。 調理実習、裁縫、純花は誰よりも優れていてた。 私はこれしか出来ないもん、お姉ちゃんが羨ましいよ。 家庭的な特技が彼女を更に魅力的にしていた。 純花は勉強もスポーツも出来ないけど、絶対良いお嫁さんになれるよ、と教師や純花の友人は口々に言っていた。 それを耳にする度に、清花は勉強もスポーツも出来るけど、良いお嫁さんにはなれない、と言われている気分になった。 でもどんなに比較されても私は純花が好きだった。 アルバムの十四ページ以降は写真がなかった、つまり十五歳以降のページは白紙だった。 十五歳、私が家と距離を置き始めた頃だ。 中学に入って、私と純花が変わり始めた。 純花は徐々に成績が上がり、陸上部でスプリンターとしての才能が開花し始めた。 対称的に私は成績が下がり、部活に入らず毎日を無気力に過ごした。 中学三年を迎える頃には、純花は成績トップクラスで陸上部部長にしてエース。 一方、私は成績も生活態度も常に指導されるのが当たり前になっていた。 優劣が完全に決まってしまった。 成績が悪くても、スポーツが出来なくても純花は人柄から擁護された。 でも私を擁護してくれる人間はいなかった。 妹を見習え。 どうして双子なのにこんなにお前は出来が悪い。 妹に才能全部取られちゃったんだよね。 私が堕落するのを待っていたかのように周囲は私を罵倒した。 純花は悪くない。 頭で分かっていても、私は純花を避けるようになっていった。 家でも学校もで顔を合わせても、話しかけてくる純花を無視した。 それでも純花は私を気遣かっていたのか、いつも笑顔で私に接した。 その純花の無垢な笑顔に嫉妬し、声を聞くのも嫌だった。 優しい純花を疎ましく感じ、細かい心遣いがカンに障った。 しかし一方で、そんな自分に嫌悪感を抱いてもいた。 純花はなにも悪くないのに、憎しみにも似た感情を抱いていてしまう自分が恥ずかしくて、許せなかった。 そんなジレンマに耐え切れず、高校に入学すると同時に私は家を出た。 純花と距離を置くしか方法が見つからなかった。
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