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私はアルバムを閉じた。
それ以上のことを思い出したくなかった。
私が汚れたことを。
花が汚れたことを。
しかし母は何故このアルバムを見ていたのか?
今更、思い出に浸って何になるのか?
一種の現実逃避なのだろうか。
玄関のドアが閉まる音が聞こえた。
「ただいまぁ」
母の声が心なしか陽気に聞こえた。
私は消灯し、部屋を出た。
「おかえりなさい」
「ただいま」
それ以上会話は続かない。
声が陽気に聞こえたのは
気のせいだったらしい。
いつも通り母の表情は沈んでいる。
純花が倒れて、私が家に戻ってからはこんな調子が続いている。
お互いが必要以上に気を遣っている。
どうして親子なのに、と思う反面、原因は私の他にない、ということだって分かってる。
「疲れたから、もう寝るね」
耐え切れず私は立ち上がった。
「おやすみなさい」
背中越しに聞こえた母の声に、私は返事をせず部屋に向かった。
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