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いつも通り教室の一番後方の席に着くと、いつも通り彼女達が近づいてきた。
「おはよう、清花」
「清ちゃん、はよー」
おはようを返す変わりに、出来るだけ自然に微笑んでみせる。
「今日、授業変更で体育だって。
マジでだるくない?
帰りたぁい」
派手なメイク、日焼けサロンに通い詰め全身真っ黒に日焼けした彼女が由里。
最近レゲエダンスを始めたらしい。
2ヶ月前はヒップホップダンスだったはずだ。
つまるところ彼女は飽きっぽい。
彼氏も気付いたらいつも違う人になっている。
「ジャージ持ってきてないし、みんなでサボろう」
明るい金髪の巻き髪で綺麗な白い肌の彼女が美香。
田舎の安いホステスはきっとこんな感じなんだと思う。
彼女はいつもへらへらと笑っている。
その笑顔は本当に安っぽい。
彼女が心の底から笑っているのを、多分私は見たことがない。
笑うことで自分をごまかしているように思う。
彼女達は、私の‘オトモダチ’。
二人が悩み苦しんでいても、私は気がつかない。
私が悩み苦しんでいても、二人は気がつかない。
いや、気がつこうとしない。
分かっていても、恐らく私達は助け合わない。
ただ一人は淋しいから、群れているだけ。
誰でもいい、誰かと居たいだけ。
だから掛け替えのない大切な‘オトモダチ’。
「清花さ、まだ続いてるの?」
由里が隣に腰掛けながら尋ねた。
「何が?」
「名前なんだっけ?」
由里が美香に問い掛けた。
「アツシじゃなかった?」
私はおぞましい寒気に全身を包まれた。
その場から逃げ出したくなった。
「そうそう。アツシさアツシ。
まだ付き合ってるの?」
「もう、別れたよ」
口の中がかさかさに渇いていた。
「そうなんだぁ」
由里はたいして興味はないらしく、手持ち無沙汰に携帯を開いた。
美香はいつも通り、へらへらと意味もなく笑っていた。
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