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その日、私は当時の彼氏と共に海へドライブに出掛けていた。 アツシという男だった。 鳶職の柄の悪い男だった。 なにもかもが適当で、知性もない男、今思えば何故私はあんな男と付き合ったのだろうか。 ドライブの行き先は、車で家から1時間ほどの所だった。 穴場スポットで平日の昼間ということもあり、私達以外に人は誰もいなかった。 私とアツシと私のお腹の中の生命以外の誰もいなかった。 避妊を正しくしなかったせいで私は生命を身篭ってしまった。 アツシは中絶するように私に求めた。 しかし私は拒んだ。 無責任に命を造り、無責任に命を壊す。 絶対に嫌だった。 『なぁ清花…愛してる。本当だよ。だからそのやめようぜ?無理だよ。子供なんて』 私は頑なにかぶりを振った。 するとアツシは舌打ちすると同時に私を車内から引きずり落とし、コンクリートにたたき付け、必要に腹を蹴った。 激痛が走り、私はもがいた。 しかしだんだんと意識は遠のいて行った。 気が付いた時には、血だらけのアツシが転がっていた。 辺りを見渡しても誰もいなかった。 つまり私がやったのだ。 しかし記憶はない。 無意識で? それに私の衣服、手、顔、どこにも返り血は付着していなかった。 有り得ないと思いつつも、私は冷静だった。 車内からロープを取り出し、近くにあったブロックをアツシに括りつけた。 そしてそれを海へと落とした。 車のナンバープレート、アツシの所持品など全て一緒に括りつけた。 この車はただの迷惑な放置車両として処分される。 アツシの両親は既に他界しており、兄弟もいない。 親戚付き合いなんてろくにしてない。 恐らく親しい友人もいない。 こいつがいなくなっても誰も何も思わない。 事を済ませた後、私はタクシーで家へ帰宅した。 帰宅すると、純花が倒れていた。 しかし私はそれ以上に気になることがあった。 お腹の膨らみが消えていたのだった。 何故? 後日母に言わず、病院で検査を受けたが妊娠していないどころか妊娠していた形跡すらなかった。
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