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男は、細い腕で私の髪をつかみ、上を向かせた。
男が私を見下ろす。
酷い顔だ。
とても幸せな家庭がある男の顔には見えなかった。
男は性器を私の口にねじ込んできた。
「もっと音立てろよ」
髪を私の首を上下左右に振り回す。
室内に卑猥で汚らしい音が響いた。
私は、この男の最高の玩具なのだ。
男は私の口で遊び続けた。
しばらくして口から性器を抜き、コンドームをつける。
男には家庭があるため、避妊には気を使う。
シャワーの前に私も薬を飲まされた。
前戯もしないでいきなり挿入する。
激しい痛みと悲しみと怒りが同時にこみ上げた。
「あぁ…いいな」
男は声を上げる。
ひどい寒気がした。
この時、まさに自分が「汚れている」と一番思い知らされる。
男が動き、私の中を出入りする度に、花びらを一枚一枚もがれる。
「はぁはぁ」
男は果てたらしい。
早漏であることが唯一の救いだった。
年齢が年齢なので何回も行為を繰り返すこともなかった。
「はい。ありがとう」
男はそう言って、机に裸の一万円札を数十枚置く。
「今日は色を付けといたよ。
また頼むよ」
服を着ながら、男は言った。
たった一回の射精のために、これだけの大金を惜しげもなく払う男を理解することは未だに出来なかった。
ただ同時にそれに私達が救われていると思うとやるせなかった。
「それじゃあね」
男は先に部屋を出て行く。
私は、今から3時間後に部屋を出る。
それが、約束だった。
誰かに見られたらまずいことだからか。
1人になり札束を数える。
32枚の福沢諭吉の描かれた紙切れが、私の手の中にある。
確かにいつもより10枚多い。
鞄に紙切れを押し込み、ソファーに座る。
ベッドには近寄りたくなかったい。
お父さん、ごめんなさい。
花は一輪、汚れてしまいました。
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