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人参、ジャガイモ、玉ねぎ、鶏肉を一口サイズに切り分け、鍋に入れて煮る。 市販のルーを入れるだけの簡単なカレー。 昔の私はこんなこともろくに出来なかった。 純花は料理が得意だった。 我が家の炊事は純花が担当していた。 炊事だけではなく、純花は全ての家事をそつなくこなした。 我が家の生活は、純花なしでは成り立たなかった。 しかし、純花が倒れた今は私が全て変わりにやらなくてはならない。 母に任せると母まで倒れかねない。 純花ほどではないが、家事はそれなりにこなせるようになったが、予想以上に骨の折れるものだった。 純花はこれを一人でやっていたと思うと頭が下がる。 鍋の火を弱めて、キッチンを出て、リビングのテレビを付けた。 ソファーに座り、リモコンでチャンネルを変える。 どのチャンネルも夕方のニュースばかりでつまらない。 ニュースは嫌いだった。 今、日本で、あるいは世界で起きてることなど私には関係ない。 総理大臣が変わろうが、日本人の野球選手がアメリカで活躍しようが、それを知ったところで私には何の影響もないのだ。 4度目につけたチャンネルで幼児向けのアニメが放送されていた。 どこか間抜けなキャラクターが、画面を駆け回っていた。 「まだやってたんだ」 それは私が子供の頃からやっている長寿番組だった。 キャラクターの声優が変わっていて、多少の違和感はあったが、内容がほとんど変わっておらず懐かしさで何だか嬉しくなった。 純花と二人でテレビにかじりついたのを思い出す。 単純なギャグが新鮮で思わず吹き出してしまった。 結局、番組が終わるまでテレビに見入ってしまい、私は焦げたカレーを食べる羽目になってしまった。 食事を終え、部屋に行こうと廊下に出た。 帰ってきた時には気付かなかったが、母の部屋の電気が少し開いた扉から漏れていた。 珍しいことだった。 几帳面な母は、外出する際に家の戸締まりからガスの元栓の確認を怠ることはなかった。 消灯もその一つだった。 気になった私はいつもは行かない、階段の奥にある母の部屋に向かった。 母の部屋に入るのは、久しぶりだった。 最後に来たのが、いつかも覚えていない。 病室同様に、寂しい部屋だった。 父の仏壇と小さなタンスとテーブルがあるだけの七畳の部屋。
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