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「私はお姉ちゃんの事を思って言ってるのに…」
千夏ちゃんは強く拳を握っている。
まさか、殴り返したりなんてしないよな?
「そう…分かった…」
そう言ってフッと千夏ちゃんの拳から力が抜けた。
よかった…殴りかかっては来なさそう。
まぁ当然か。
あれだけ大好きだった姉を殴ったりはしないよな。
「だったら好きにすれば!」
俺が安心した矢先、千夏ちゃんは玄関の方へと走り去った。
出てくつもりだ!
「千夏ちゃん!」
俺は慌てて千夏ちゃんを止めようとする。
「待ちなさい千夏!」
渚さんもその後を追ってくる。
でも、ちょっと走りだすのが遅かったみたいだ。
玄関の戸は開けられたまま、千夏ちゃんは靴も履かずに外に飛び出した様だ。
最悪な事にこの辺りは街頭が殆どない。
外は真っ暗な闇が立ち込め、そこに千夏ちゃんの姿は見えない。
これは愈々ヤバくなってきたな。
「まいったな…取り敢えず懐中電灯持ってきます。急いで探しに行きましょう。」
俺は台所に向かおうとした。
でも、返事もないままその場に立ち竦む渚さんが心配で一度振り返った。
「どうしよう…」
茫然と立ち尽くしたまま、小さく渚さんが呟いた。
「渚…さん?」
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