本当の気持ち

5/11
前へ
/11ページ
次へ
「私はお姉ちゃんの事を思って言ってるのに…」 千夏ちゃんは強く拳を握っている。 まさか、殴り返したりなんてしないよな? 「そう…分かった…」 そう言ってフッと千夏ちゃんの拳から力が抜けた。 よかった…殴りかかっては来なさそう。 まぁ当然か。 あれだけ大好きだった姉を殴ったりはしないよな。 「だったら好きにすれば!」 俺が安心した矢先、千夏ちゃんは玄関の方へと走り去った。 出てくつもりだ! 「千夏ちゃん!」 俺は慌てて千夏ちゃんを止めようとする。 「待ちなさい千夏!」 渚さんもその後を追ってくる。 でも、ちょっと走りだすのが遅かったみたいだ。 玄関の戸は開けられたまま、千夏ちゃんは靴も履かずに外に飛び出した様だ。 最悪な事にこの辺りは街頭が殆どない。 外は真っ暗な闇が立ち込め、そこに千夏ちゃんの姿は見えない。 これは愈々ヤバくなってきたな。 「まいったな…取り敢えず懐中電灯持ってきます。急いで探しに行きましょう。」 俺は台所に向かおうとした。 でも、返事もないままその場に立ち竦む渚さんが心配で一度振り返った。 「どうしよう…」 茫然と立ち尽くしたまま、小さく渚さんが呟いた。 「渚…さん?」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加