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『不安が現実になるのか。』
『まさか希望が…。』
足元がぬかるんでいる。新雪が残る場所ではギュッ、ギュッと軽快な音が耳をくすぶる。
希望の部屋へと、静かに駆け上がったのだった。
恐怖が心臓を喰らい潰す。
痛い、痛い、痛い…。
いつもの場所に鍵がない。
ドアノブを捻る。部屋に鍵はかかっていなかった。
また細い廊下を駆ける。
希望は、大好きなベッドカバーの上で、手首から血を流していた。
少しでも汚れたら嫌がっていたベッドカバーが赤で、希望の赤で、染められていた…。
「あ…あぁ…ぐぁ…っ…」
こんな、声にならないような不思議な音を出したのは、最初で最後だろう。
最後にしたい…。
僕は恐怖に打ち震えた。携帯電話が手につかない。
『119』すらも押せない。
「…っけ、落ち着け、落ち着けッッッッ!!!」
そう叫びながら、死に物狂いで電話をかけた。
そこからの記憶はない。
蘇ったときに、僕はまるで、親牛が生まれたての仔牛にするかのように、希望の深い傷口を舌で優しく撫でていた。
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