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かつて僕が愛したひと、
大野 希望(―のぞみ)。
彼女は幼い頃に病気でたった一人の母親を亡くしている。
記憶には殆ど残っていないそうだが、ただひとつ、笑顔だけは鮮明に脳裏に浮かぶらしい。
父親は写真家であり、世界中を旅する身。その父親からの仕送りを元に、親戚宅で生活を送った。
その孤独な環境のためか、周りには明るく優しい人間になった。
そしてその笑顔は何より、誰より、魅力的だった。
まさに、僕の太陽だった。
希望からの着信があったのは、そう、今から五年前になる。
「もしもし、翔?」
声がどことなく震えている。
「どうした急に。なにかあった?」
突然のことで心の動揺はあったものの、希望の不安げな声に、気をしっかり持った。
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