『あなたと、ともに。』

3/14
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「話、聞いてくれる?」 十二年前と変わらない口癖。 話し合うときには、まずこのワードを発する。 「どうした?」 「私、大切な人と別れたんだ。ほら、翔と別れるときに『元彼が寄りを戻したいっていうから』って言ったでしょ?その元彼のことなんだけど…。」 記憶が、戻る。辛い思い出だ。 やっとの思いで希望を手に入れたのに、たった一ヶ月での別れ。確かにそんなことを言われた。 「それで、どうして俺なんかに電話して来るんだ?」 苦い記憶のせいか、少し冷たい口調になった。しかし、すぐに後悔することになる。 「翔なら聞いてくれると思ったから…」 希望の声がまた、震え出した。 「わかったよ。聞いてやる。」 僕の中の最高に優しい声で、 そういった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!