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外は暗い曇天から雨粒が滴っていた。道はいつもより黒く染められている。
そんな天候の中、
途中、焦るばかりにナビの言うことををあまり聞いていなかったせいで道に迷ってしまい、自分自身に苛立っていた。
車で、無駄に一時間かけて希望のアパートに着くと、二階の左隅の部屋だけ明かりが燈ってカーテンの淡い桃色を発していた。
「あそこか…」
そう呟き、小雨をさけるように駆け足で、アパートの階段へと向かった。
静かなあしどりで、二階に上がると、
『大野』と可愛くデコレーションされた表札のドアを見つけ、
前に立ち、チャイムを鳴らした。
しばらくすると
ドアがゆっくりと開いていく。
中からは、僕の記憶の中の希望とは掛け離れた、予想だにしない、絶望の色が滲む女性が出てきた。
『久しぶり…入って。』
わずかな笑顔を見せながら再びドアを押した。
中に招かれると、部屋はその心のように乱れていた。
短い廊下を通り、部屋に入ると、ベッドの枕の横にカッターナイフが置かれているのが目を引いた。
他はインスタントの食品に、栄養ドリンク…
ちょうど、極度にストレスが溜まった社会人の日常生活が営まれていたような、そんな印象を受けた。
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