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「あいつが憎い。殺してやりたいほど、憎い。」
目が真っ赤な血を帯びていく。
恐怖すら感じた。
「一度は死んでやろうとも考えた。だけど死んだら負けなんだよ。」
眉間のシワが深く刻まれる。
「だからね私、生きるんだ。あいつなんかのために死んでたまるかって。
ねぇ、私の名前、漢字で『希望(きぼう)』って書いて『のぞみ』って読む。
私、この名前大好きなんだ。
死んだお母さんがくれた名前。
命。
その名前の通り、お母さんを誇りに思って明日を生きるんだ。」
ゆっくりと、淡々と、次々と柔らかい唇から言葉が紡ぎ出されていく。
母への強い愛情。
母が子どもへ与えるものが
無償の愛ならば、
子が母へ贈るのは、
無限の感謝か。
言葉とともに、希望の頬を涙が伝った。
ふと、少し輝きと落ち着きを取り戻した希望の目を見て、
驚いた。
「ありがとう、翔。ちょっぴり気持ちが楽になったよ。
一方的でごめんね…悪い癖だね。」
「あぁ、なんか…ごめんな。
なんにも出来なかった感じが…」
「そんなことないよ。こんな時間にここまで駆け付けてくれたんだから。嬉しかったよ。」
ちょっと笑って、緩んだ顔を見て、僕は希望を支えていくことを、
心に誓った。
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