コンビニ

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「二四六円になります」  麻薬の様な声に酔いしれながら財布を開いた。小銭入れを見て、赤らんでいた頬から、血の気が失せていく。  ――に、二〇〇円しかないっ!  大きく開いてみたり、閉じてからもう一度開けてみたりしても、ない物が湧いてくる事はまずない。  涙目で他の場所を探していると、ぽろりと一〇〇円玉が二枚零れた。  ――あああああああっ!  声にならない声を上げて、薫は転がった一〇〇円玉を追いかける。一枚拾った所で、大好きな声に呼ばれた。 「すいません、こちらにも落ちましたよ」  言いながら店員が差し出した一〇〇円玉は、二枚。零れかけた涙が、スッと引く。 「え……これ――」  唇に人差し指を当てられて口をつぐむ。
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