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「しー、ですよ」
耳元で囁かれ、言い方と行動に胸を高鳴らせながらも、赤らんだ頬を隠す様に大きく頷く。少しキザな行動も、憧れの彼にはよく似合っているように見えた。
「五四円のお釣りになります」
「あ――」
これは、と言いかけた薫の言葉を遮るようにお釣りとレシートを握りこませる。
「また来てくださいね」
その言葉と共に、そっと促される。薫は覚束ない足取りで、店から出た。
「ありがとうございましたー」
声に振り向くと、店員は次の客の相手をしていた。
――顔、覚えてもらえたかな?
にやける顔を抑えようともせず、軽い足取りで帰路についた薫であった。
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