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「死後まだそれほど経っていないな、死後硬直も始まっていない」
「悲鳴を聞いてから一分も経ってないじゃない。
──だいいち、この人、まだ死んでないんじゃ――」
「凶器は……バナナの皮のようだな」
「どうやったらバナナの皮が凶器になるのよっ!」
「いい質問だね、ワシトンくん」
「ワトソンだって」
「石とバナナの皮を殺したい相手の通り道に置いておくのさ。
あとは皮を踏みつけ滑って転び、石に頭をぶつけるのを待てばいい」
「『まちぼうけ』みたい……」
「簡単なトリックさ」
「どこがトリックなのよ!」
「これは計画的な殺人だ」
「単なる事故じゃないの?! それにこの人まだ生きてるよ。早く救急車を呼んだ方が――」
「よし沙美亜、さっそく被害者の身元を調査するんだ」
「あのね、だから――」
「おっと、こうしてはいられない。警察に電話しなければ」
――昔から名探偵の推理は警部が聴くものと決まっているからな。
オレは警察に電話をかけるために急ぎ事務所に戻った。
「のぉあに?!」
受話器を片手に、窓から下――つまり死体のあった場所を覗き込んだオレは、思わずハードボイルドには似合わない驚きの声をあげてしまった。
死体が消えている!?
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