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銃声がやけに遠くに聞こえる。
実際はすぐそこから聞こえているはずなのに……
「くそっ……」
オレは歯噛みをした。ここまでか……
頭が回らない。もはや限界だった。
ヤツは容赦なくオレに襲い掛かる。
ヤツの名は──
「はっ?!」
突然のドアの閉まる音。その瞬間、ヤツが消え去った。
大きく息を吐く。
ヤツからオレを救ったのは――
「あいかわらず暇そうですねぇ」
セーラー服姿の女子高生だった。
琉花嶋(るかしま)沙美亜(さみあ)。高校二年。
一応、オレの助手である。
え? 何の助手かって?
おっと、自己紹介を忘れていた。このオレとしたことが。
オレの名は麻具根(あさぐね)隣(となり)。二十六歳。職業は……そう、探偵。
だが、そんじょそこらに掃いて捨てるほど転がっているような、ごくごく普通の探偵とは訳が違う。
……そう、オレは──
超ウルトラスーパーデラックス名探偵!
解決した事件は数知れず。もはやこのあたりに住む者はオレに解決されることを恐れ、誰一人として事件を起こさない。
普通、世間一般に噂される名探偵といったら、迷子の子犬捜しとかドブさらいなどという、
みみっちい依頼を引き受けたとしても、超ど田舎の殺人事件とは無縁のさびれた温泉旅館に遊びに行ったとしても、なぜか必ず殺人事件が起こるという幸運──もとい、不幸な運命を背負わされて生きていくものなのだが、どうやらオレほどの名探偵になってしまうと、その運命でさえ、はね除けてしまうらしい。
よって、平和なのだ。この都市(まち)は……。
それ故の苦悩もある。
そう、オレは──
ぷつん。
──はっ?!
「だーっ! 何するんだ沙美亜! 人が観ているテレビ、勝手に消すんじゃねぇっ!」
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