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「あ、観てたの? なーんか、ぼへらっとした顔でぶつぶつ言ってたから、てっきり別の世界に行っちゃってたのかと思って★」
「観ていたんだよ! まったく……」
オレはリモコンでテレビの電源をオンにした。
[──なことをしても、天国の春明さんは喜ばないぞ。さあ、銃を渡すんだ]
宮田が手を突き出す。
[う、うう……]
谷口が涙を流しながら宮田に銃を渡すと、熊田に向かって両手を突き出す。
熊田の後ろにいた下条が手錠をとりだし、谷口に近づく。
[まて]
熊田が、下条を制し、
[必要ない]
驚きの表情を浮かべる谷口。
[さあ、行こうか]
素直に従う谷口……
ぷつん。
しばしの静寂があたりを包む。
「観てるんじゃなかったの?」
「いや、いい……」
テレビの解説をしても、話が先に進まん。
それより続きだ。
さて、どこまで話しただろうか?
ああ、そうそう、平和ゆえの苦悩──だったな。
そう、この都市は平和。
ふっ、優秀であることも、考え物だな。
「なーにが『考え物だな』よぉ! こんな人口数百人のド田舎に、そうそう事件なんて起きるわけないでしょ。
しかも麻具根さんて、いなくなった犬捜しとか、いなくなった猫捜しとか、いなくなった牛捜しとか、いなくなった豚捜しとか、いなくなった羊捜しとか、いなくなった馬捜しとか、いなくなったお婆ちゃん捜しとか、そういうのはやらないし」
「みんないなくなった動物捜しじゃないかっ!」
「お婆ちゃんを動物と一緒にするのは失礼でしょ!」
「おまえが一緒にしたんだろうがって、あれ? オレ今、自己紹介を口に出したか?」
「うん。しっかりと★」
「ふっ、オレぐらい優秀な探偵になると、気付かないうちに、考えていることを口に出してしまうようだな」
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