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「あーっ、あーっ、あーっ! おまえ今、オレの優秀な頭脳を叩いたなぁ?!
そーゆーことするとな、今月のバイト代……あっ!」
思い出した。思い出してしまった。
――よく考えたら、こいつがピンチの元凶ではないか。
オレはそれを考えていてヤツ──睡魔に襲われたのだ。
こいつの今月のバイト代をどうすればいいのか考えていて……。
「あ、そっか、もうすぐだぁ。バイト代入ったら何買おうかなぁ……」
わざわざ口に出してバイト代の使い道を思い巡らす沙美亜。「ちゃんとバイト代払ってね♪」とでも言いたげだ。
まずい、これはひじょー──うに、まずい。
オレの究極の超必殺技、バイト代を踏み倒し攻撃が、沙美亜には全く効かないということは、先月実証済みだし、かといって今月は、へそくり全てを新車を買うのにつかってしまったし……
──くそ、どこかに殺人事件でも転がってないかなぁ……。
「不謹慎な探偵……」
「あん? 沙美亜、おまえ、いま何か言ったか?」
「ひ・と・り・ご・と♪」
――まあいい。
オレは立ち上がると、トレンチコートを肩に掛け、出口に向かった。
「探偵は足で稼ぐものだ」って、どっかの探偵が言っていたような……いや、まてよ、刑事だっけか? あ、いや、もしかしたら、新聞配達の少年だったような気も……
──う~ん、なんだったかなぁ……
うーん、うーん、うーん……
「なに、唸っているの?」
「はっ!」
オレは沙美亜の言葉で、我に返った。
ふっ、オレとしたことが、くだらないことで、大切な頭脳を使ってしまった……。
「でかけるの?」
「まあな」
「で、コートなんてどうするの?」
「着るに決まってるだろーが! 着もしないコートをもって歩いてたら、単なる馬鹿じゃないかぁ!」
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