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―数時間後―
最初に目にしたのは何処かの廃屋の中の薄暗い部屋。
壁はボロボロ、窓は割れていた。
「どこだ…ここは」
いったい何時間気を失っていたのかわからないが、かなり時間は過ぎているらしい。
外は暗くなってきている。
(…やられたな)
俺は自分の不甲斐なさを呪った。
いったいどこから手に入れたのやら。
(何故、俺があんな状態になると知っていたんだ…?)
俺はそう思いながら立ち上がろうとしたが、あることに気づく。
(……あいつらめ…)
手足が紐で縛られていた。
それもかなりきつく。
俺は解こうともがいたが、その努力も虚しくおわった。
(さて…どうするか…)
俺はこれからのことを思うと思わずタメ息が出た。
(…来たな)
カツカツと足音が聞こえる。
誰かが光明の部屋に向かってきているようだが、誰かはわからない。
そしてとうとう俺のいる部屋の前で止まった。
ギィ…と扉があく。
そこには俺を気絶させた張本人がいた。
「どうだ?神碕、敗者になった気分は」
「……いいものではないことは確かだな」
「くっくっく…そうだろう?」
「ああ…そういえばお前、どうしてアレを知っていたんだ?」
「ふっ……こちとら伊達な情報網じゃあないさ」
「…へぇ」
光明が言ったアレとは目眩のことだ。
なんでも、幼い頃からあったらしい。
医者にきいても原因がわからないそうだ。
「さて、これからお前には地獄を見てもらうからな」
男は光明を嘲笑うかのように見下すと、注射器を持ってきた。
「なんだ?それは」
「ああ、これはな……」
男は言い終わる前に素早くソレを刺した。
光明は痛みに少し顔をしかめる。
だが、抵抗はできない。
何故だかわからないが、体が拭くが痺れている。
「お前……なにを……」
「麻薬って知ってるよな?」
「…………」
「これは三種類の麻薬を合成してつくったオリジナルの麻薬なんだよ…」
「な…んだと…?」
「ああ…これはもう麻薬出はなく、ただの毒かもねぇ?」
男は狂ったように笑いだした。
ドクンッ
その時、光明の体に冷や汗が吹き出した。
そして、堪え難い頭痛が襲い掛かる。
蘇る記憶、家族の血、蔑んだ目
精神がいかれそうになったその時。
あの声が聞こえた。
『…お願い…』
そして俺は再び闇へと沈んだ。
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