吉岡美優

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駅から徒歩10分くらい歩くとホテル街に入る。 オヤジはニヤニヤと笑いながら私の肩に馴れ馴れしく手を回した。 「ねえ、お嬢ちゃん。名前何て言うの?」 「……別に何でもいいじゃん。おじさんが名前つけてよ」 「そう?…じゃあマナミちゃんでいいかな」 「いいよ。何でも」 今日はマナミか。 昨日はアイカで一昨日はユキ。 明日、 私は誰になるんだろう。 「ここでいい?」 「うん」 目の前のラブホテルは、嫌にピンク色で酷く吐き気がした。 でも、 どうでもいい。 どうだっていい。 温もりを、もらえる。 今日も、 もらえるんだ。 「おじさん」 「何?」 「私のこと、必要?」 「ああ。必要だよ、すごく」 "必要" その言葉は安定剤みたいで、頭の奥に溶けていく音がした。 だけど同時に、心臓にまた空白が、できた。
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