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『ありがとう。母さん』
両親に今の自分の中で1番の笑顔を向ける。
すると両親は微笑んでいた顔をさらに綻ばせた。
『サイスももう7歳か……。時の流れとは早いものだ。ついこの前まではこーんなに小さかったのにな』
そう言って、父は親指と人差し指で豆を摘むような動作をする。
『父さん!オレそんなにチビじゃない!!』
『あぁ、そうだな。でも、最初は本当にこんなんだったんだぞ?』
『父さん、嘘つきは泥棒の始まりなんだよ?警察官なのに嘘つきなんだ。父さんは』
『…サイスはいい言葉を知っているな。しかし父さんは嘘なんか言ってない』
『ホントに?』
『あぁ、本当だ』
『―――――やっぱり父さんは嘘つきだ』
『……なぁ母さん、意味をうまく伝えるって難しいな。俺は今ほど自分を無能に思った事はないよ…』
ガックリとうなだれる父。
『まあまあ♪』とその様子をおもしろそうに見ている母。
話の内容はともかく、とても穏やかで温かい時間だった。
このまま時が止まってしまえばいいのに。
思わずそう思ってしまう。
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