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「おっと」
ドン、と肩に走った鈍い衝撃に、1人の男が歩みを止めて半身になった。
漆黒に沈んだ闇夜の元、石畳の街路を挟む建築物で丸いランプがぼんやりと薄黄色に輝いている。
「どうした?」
「いやー……アイツぶつかっておいて謝りもしねぇの。気分悪」
疎らに設置されたランプは一定の周囲のみ照らし、黒くみすぼらしい後ろ姿はあっという間に闇に溶ける。
良く良く眼を凝らして見れば、複数の人間が肩を並べているようで道の半分程を占領していた。
「マナーがなってない馬鹿共だろ。気にする事ねぇよ」
そう言って軽く笑い、連れの若い男は不機嫌な男の背中を小突く。
小さな昆虫が淡い光に群がった。
「ま、そうすっかな」
呆れるように苦笑し、男は目的地へと固い石畳を踏み出す。
幾分か軽くなった足取りは、ズボンポケットの軽さを現していた。
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