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彼女がいつものように扉に鍵をかけ、地下の一室に降りて行くと、細身のスーツに身を包み、眼鏡をかけた知的な顔つきの青年が、パソコンの画面から彼女に視線をうつした。彼女はその視線を受け止め、柔らかく微笑んだ。
「どう?何か情報はつかめた?」
「少しな…裏のほうで探して癒着してそうなのをピックアップしてみた。それだけで、この数だ。さすがは、ドン・ラビンだ。」
そう言ってパソコンの画面を彼女に見せる。彼女の目が大きく見開かれた。
「こんなに…ざっと100はあるんじゃ?」
「ご名答。がっつり癒着してそうなとこをピックアップして、この数だからな…。こいつが裏社会のドンだってのを、知ってる人間が何人いるんだかな。」
青年はそういうと、回転椅子を回して立ち上がった。彼女はパソコンの画面から目を放すと、部屋の中を見回す。青年は、その行動で彼女が何を求めているのかをすぐに感じとった。
「ホークだろ?」
「そう。情報は、一度に2人に聞かせたほうが楽でしょ?それに、これ。」
彼女は右手に持っていた紙袋を、パソコンがおいてあるデスクの横に置いた。
青年は紙袋を少し開き、中を覗く。
「ショートケーキか。」
「情報集めるのに、家のほうから収集したほうが楽そうだから、家に行くって言ったら、ここのケーキ買ってきてくれって。相当気に入ったみたいね。」
彼女が再び微笑むと同時に、階段を勢いよく駆け下りる音がして、部屋に筋肉のついた長身で大柄の男が勢い良く入ってきた。
「遅れてわりぃ!レオ!あ…シェリア…来てたのか。」
「あんたが一番遅いわ。お茶いれてちょうだいね?せっかく買ってきたんだし、食べながら説明するわ。」
シェリアが紙袋を指差すと、ホークの顔がパッと明るくなった。
「マジで買ってきてくれたんだな!?あそこのショートケーキ!?」
「俺も中身見た。間違いなくショートケーキが入ってた。俺はコーヒーな。」
一番遅くきた人間が飲み物の用意をするのは、この3人のルールだ。メニューはシェリアが紅茶。レオがコーヒー。ホークがコーラといった具合だ。
いつもは文句を言いながら飲み物を用意するホークだが、今回はケーキのこともあり、嬉しそうに用意を始めた。
全員の飲み物が揃い、ケーキが1人ずついきわたった。ちなみにシェリアはチョコレート、レオはチーズ、ホークはショートケーキだ。
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