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「予想はしてたけど、やっぱりね。大きくもない企業がこんなに利益あげるなんて、どう考えても不自然だもの。」
「あいつもバカだな。気抜いてたんじゃねぇのか?俺達が裏データを手に入れられないってタカくくってたとか。」
「いや…おそらくは、計算のうちだろう。想定内ってところだろうな。」
レオの冷静な言葉に、相手をバカにしていたホークが怪訝そうに眉をひそめた。シェリアはパソコンの画面を一瞥してから、紅茶に口をつけて、呟いた。
「挑戦状でしょうね。ケチな窃盗団やバカな強盗とは、わけが違うわ。何の考えもなしにこんなことするわけないし。」
「だろうな。俺達に気づかせる為に、わざと仕組んだんだろうな。」
2人の会話を黙って聞いていたホークは、顔に微かな怒りを滲ませて言った。
「用は喧嘩売ってきたってことだよな?上等だ!スラムで喧嘩売ったらどうなるか、俺達に挑戦しようなんて1億年早いってことを、体に覚えさせてやる!!」
言い終わると同時に、部屋を飛び出そうとするホークの前にシェリアが立ちふさがり、ホークの首に腕を絡ませにこやかに一瞬微笑んだ。しかし次の瞬間、瞳が氷のように冷たくなった。
「バカじゃないの!?今の状況で突っ込んで行くのは、自殺に行くのと同じよ!ムカつくのはわかるけど、少し冷静になりなさい!」
不意打ちの包容に笑顔。次に冷たく突き刺さる視線。それだけで、充分効果はあったが、更にシェリアに間近で怒鳴られたことで、ホークは完全に固まった。黙って見ていたレオが、ホークに優しいトーンで声をかける。
「落ち着いたか?」
「あ?…あぁ…。」
その返事にシェリアは首から腕を放した。ホークの頭に血がのぼったときによく使う手だ。だが傍目で見ていても、その効果は嫌というほど伝わる。冷静なレオでさえ、身震いしそうになるくらいだ。
「ともかく、これだけのデータが揃ってるんだから、後は情報屋に任せましょ?作戦はそれからでしょ。あたしも売られた喧嘩は買うわ。」
シェリアがそういうと、レオは少し微笑んでから、パソコンの画面を切りかえた。情報屋に依頼のメールを送るためだ。
「とりあえず、今日のミーティングはこれで終わりだな。」
レオの一言で場の雰囲気が和やかになる。ここからは談笑の時間だ。
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