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「…でも---」
「総司。」
沖田の声を土方が力強く、優しさを含んだ声で遮る。
「………望月の過去に、いや………誰かの過去に自分を重ねるな。」
---ドクンッ
土方の言葉に、沖田の心臓が大きく反応する。
まるで耳の近くにあるかのように、心臓の鼓動が大きく聞こえてくる。
『………あなたと一緒になることが叶わぬのなら---』
沖田の脳内で女性の声が響き渡る。
その声を掻き消すかのように、
その時の記憶を忘れ去るかのように、
沖田は頭を左右にふった。
「………そんなんじゃ………ない………」
沖田の口からポツリと、
敬語がとれた、か細い声が漏れてくる。
沖田のようで、沖田では無い声。
まるで、幼い頃の沖田のような声だ。
「……………」
それを聞いた土方は、
辛そうな表情で沖田を見つめるだけで、
何も言わなかった。
……………望月さん。
貴方は………何者ですか………?
そして、貴方の過去は何ですか………?
少し冷静さを取り戻した沖田は、
視線を障子で閉ざされて見えるはずのない満月に向け、
静かに、翼に問い掛けた---
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