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………黙ってちゃ、分かんないんだけどな………
翼が口を閉じてから、
どれだけの時間がたったのだろうか。
長いようで短い時間が過ぎた気がする。
その間、翼と男は一度も口を開いていない。
沈黙と微かな殺気だけが、この場を支配していた。
「…本当、忍者さんは用心深いんですね。」
ため息と共に嫌味っぽく言葉を告げ、
沈黙を一瞬で壊す。
「………得体の知れない者と接するときは、用心深くなれと教わったので。」
「ははっ!言いますね。」
男の思わぬ嫌味に、
翼から感嘆の声と苦笑が零れる。
「でも………そんなに用心深いんじゃ、私のことなんて何一つ分かんないと思いますよ?」
ニヤリと笑って視線を男に向けると、
ほんの一瞬、苦虫を潰したような目を見た。
翼は、今度はクスッと艶やかに微笑み、
静かに立ち上がる。
男がピクッと反応し、
手に力を入れたのを
風と殺気を通して感じた。
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