後片付け

20/41
前へ
/251ページ
次へ
「結構今の、鋭かったのになぁ……… 咄嗟に体を反転してなければ、鼻に当たってましたよね。」 スコーンッて感じで、 と言いながら翼は楽しそうにその様子をジェスチャーする。 確かに、避けなければ鼻に当たっていた。 ---狙いやすそうで狙いにくい鼻に。 翼のコントロールのよさに、 男は素直に驚きと感心をした。 しかし--- 「…何の真似ですか?」 男は、翼が仮だとしても仲間である男に 武器もどきである木の枝を投げ付けたことに対して、 微かな怒りと疑念も抱いていた。 「それは勿論、私の“素性”を探る人の力量をはかるためですよ。」 「何のために---」 「だって、私の“素性”を探る人が弱い人なんて…………… “素性”を知る前に返り討ちにあっちゃいますよ?」 男の言葉を遮り、 笑い声を含めてサラっと返り討ち宣言をする翼。 本気とも冗談とも言えるその口調に、 男は何と返せばいいのか分からないでいた。 「ま、貴方は合格。 本来、望んでいない私の“素性”は簡単に分かるでしょうね。」 「………ー--っ……」 翼と男の視線が絡み合う。 翼の瞳を見る限り、 男の咄嗟のごまかしに騙されていないことが安易に分かった。  
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2661人が本棚に入れています
本棚に追加