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「結構今の、鋭かったのになぁ………
咄嗟に体を反転してなければ、鼻に当たってましたよね。」
スコーンッて感じで、
と言いながら翼は楽しそうにその様子をジェスチャーする。
確かに、避けなければ鼻に当たっていた。
---狙いやすそうで狙いにくい鼻に。
翼のコントロールのよさに、
男は素直に驚きと感心をした。
しかし---
「…何の真似ですか?」
男は、翼が仮だとしても仲間である男に
武器もどきである木の枝を投げ付けたことに対して、
微かな怒りと疑念も抱いていた。
「それは勿論、私の“素性”を探る人の力量をはかるためですよ。」
「何のために---」
「だって、私の“素性”を探る人が弱い人なんて……………
“素性”を知る前に返り討ちにあっちゃいますよ?」
男の言葉を遮り、
笑い声を含めてサラっと返り討ち宣言をする翼。
本気とも冗談とも言えるその口調に、
男は何と返せばいいのか分からないでいた。
「ま、貴方は合格。
本来、望んでいない私の“素性”は簡単に分かるでしょうね。」
「………ー--っ……」
翼と男の視線が絡み合う。
翼の瞳を見る限り、
男の咄嗟のごまかしに騙されていないことが安易に分かった。
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